こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
ちょっと変わった本金箔の貝桶。

貝桶(かいおけ)とは6角筒形の容器で、貝合わせの貝を入れる一対の容器です。
貝合わせとは「蛤貝(はまぐりかい)」の中側に絵や歌が描かれており、同じ絵の貝を2つ合わせる遊戯のこと。
簡単にトランプゲームで例えると神経衰弱で、現在ではあまり馴染みが無いかもしれませんね。
けれど先日、名古屋のとる展示会で可愛らしい貝合わせを出されている方がいて、つい惚れ込んでしまいまして。
指先ほどの小さな貝に、細かな絵が綺麗に描かれており、とても綺麗で可愛らしくて。
実は、別の展示会場でも拝見させいただいていたのですが、作者ご本人もいらしてて「この子の作品だったら良いな・・・」と記憶しておりました。
今回その作品に再会した訳ですが、せっかくの作品ですのでお雛様のお飾りとして置くにも、ただ置くだけではもったいないし、何かこう・・・綺麗に映える様な・・・と会場で考えていて、未だ思案中です。
作家さんの顔も拝見している訳ですし、よくある玩具の様なカテゴリーとしてお客様にご案内したくないと思っておりまして、なんとか生かす方法をと。
それで、ふと思い出したのが写真の金箔押しの貝桶。
こちらは一点もので、木製の貝桶に蒔絵を施し、その上から金箔を貼ってあります。
ですので、蒔絵がうっすらと出ているのがお分かりになるかと。
これが、単なる金塗装だと価値はありません。
ここで豆知識ですが、木製の上塗りは商品のグレードにより回数が異なります。超高級品の本漆塗りでは、3~4回の上塗りを行い、数回「カエシ」をします。カシュー塗りの場合は、高級品で2回、並物で1回が一般的といわれ塗物は何回もてをかけて、塗りを丁寧にするかどうかで製品の価値が決まるといえます(作家さんにより異なります)。

(画像をお借りしました)
この塗りですが非常に難しく、少し埃や気泡が入っただでも目立ってしまうので、埃がたっていない部屋で気泡の入らない様に塗るのですが、面積が大きいシンプルな黒塗り等は埃や気泡がとても目立ってしまう為に難しく、現在では黒塗りの大きな屏風というのは姿を消しつつあります。
それだけ、塗りというのは大変な作業なのです。
実は、ケースの木枠等も同じ。
こうした事を知っているのと知らないのとでは大きな違いで、よく取っかえ引っかえでお道具類を乗せ換えるところは、そうやっても痛まない様なプラスチック製であったり、塗装と思っていただいてもよろしいかと思います。
本当に良い物であれば、その様にあえて傷が付く様な事は出来ないでしょう。
そして、最近流行りの白木ですが、中には薄い膜でコーティングしてある物もあります。
そうする事で「焼け」や「変色」「シミ」等を多少防げるのですが、必ずといってよいほど焼けや変色が起こります。
これは白木の宿命でもあるのですが、その「焼け」を経年変化としてお楽しみいただければ良いのですが、「久し振りにお飾りしてみたら色が変わっていた・・・」とおっしゃるお客様もおられますが、白木という物はそういう物であり、残念ながら修理というのはできません。
ですので、昔からの人形専門店というのはお道具はともかく、白木というものはあまり多用しませんでした。
現在は流行という事もあるようですが、その辺りの事を承知の上でお選びいただくとよろしいかと思います。
良質な木を選び、素材の美しさを生かした白木のお道具類で、大変美しく高価な物が実在し、秀月でも時折使用する事がございますので。
白木と呼ぶよりも、木製ですね。

という事で、今回は美しい本金箔の貝桶。
珍しいお品でもありますが、これはこれで楽しめるのではないかと思います。
実は、良質なお道具の揃え方ってあるんです。
それは秀月でお選びいただいたお客様のみに限り、ご案内・ご提案させていただいておりますので。
一気にお雛様の世界が広がります。
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人形師・甲冑師 十七代目 人形の秀月