こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
東京都小平市のH様より、お雛様の冠の修繕を承りました。

H様は最初こちらのブログをご覧になり、お問い合わせをいただいたのが始まりです。
38年前のお雛様で、天冠を載せる為に冠が折れてしまったとの事で。
当時の天冠は、確かに豪華ですが重さがある為、この様に冠が折れてしまったり、天冠が落ちた拍子にお顔に傷が付いてしまう事が多かった為、一時期から横に天冠の載せる台を附属し、そこに載せ女雛の横に置いてお飾りする様になしました。
H様の場合、お顔に傷が付かなかったのが不幸中の幸いで、見たところ冠の修理のみで済みそうでした。

見事に折れてしまっていますが、中にはご自身で接着剤で留めようとされる方もいらっしゃいますが、接着剤では接着できませんので。
逆に髪の毛等に接着剤が染み込んでしまい、修理しようにも出来なくなってしまいます。

髪の毛のほつれは無い様でしたので、冠のみの修理です。
ご覧の通り、芯棒が頭の中に入っておりますので、それを上手く外す事から始まります。
これも上手くやらねば髪の毛が乱れてしまいますし、生え際の額に傷がついてしまっては元も子もありませんので。
この時、同じ冠があれば良いのですが、年代物になってきますと既に廃盤になっていたり、手に入らない事も多くなりますので、その場合は似た様な形の冠で代用させていただきます。
それにしても、この子は高貴な綺麗なお顔ですね。
この子のお顔も、プロの目から見ると間違い無く流行り廃りの関係ない美しいお顔です。
そして、修繕が完了したのがこちら。

冠が折れてしまっている時は、どこか寂し気な表情でしたが、修繕された事で気品ある凛とした表情に戻りました。

よく皆さんおっしゃられるのですが、お人形といえど大切にしていれば必ず表情が出てきます。
それはもう、その方にとってはただの物ではないんですね。
こう書くと、一部で批判的な意見も出てきますが、怖いとかそういう事ではありませんので。

例えば・・・愛車の表情が分かるとか、同じお花でも一生懸命育てたお花は可愛らしく見えるとか。
愛着ですね。
私たち職人は制作する側の人間として、ひとつひとつ膨大な工程と熟練の技を屈指しながら制作する訳ですから、偶然何年か後に再会した時も「この子は父が、自分があの頃制作した子だ・・・」と分かる様になりますから。
職人とはプロとはそういうものです。
こうした事が「にわか人形専門店」とは異なるところで、全国各地にある老舗と呼ばれ仕事を知る人形専門店は頑張っておられ、そうしたお店であればまずは問題なく、それ故にお人形選びの前に先ずはお店選びが重要な訳です。
「買ったお店で修理を断られて・・・」というご相談も多くいただきますが、修理も出来ないお店が果たして専門店と呼べ、人形の作りやお飾りの事が分かるのか・・・と思うのですが。。。
つい、いつもの事ながら話しが脱線してしまいましたが・・・H様のお雛様の冠の修繕も無事に完了いたしました。
お人形もお衣裳も、38年経っているとは思えないほど綺麗な状態でしたので、どうぞこれからも末長くお飾りくださいね。
この度は、誠にありがとうございました。
人形の修理・リメイクにつきましては、こちらよりご覧ください。
こちらの旧ブログからは、さらに膨大な気合の入った修理例をご覧いただけます。
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