秀月オリジナルの飛龍兜が完成

こんにちは、人形の秀月 十七代目です。

秀月オリジナルの飛龍兜が完成いたしました。

接客以外では工房で黙々と制作している訳ですが、様々なパターンの兜を試作しては創り直しての連続で、答えが無ければ正解も無いので自分の世界に入り込んでしまいます。

こうした仕事は仕事云々ではなく、基本的に好きでないと出来ない仕事ですね。

「こういうのが今の流行で、こうすれば必ず売れるだろう」と追い掛けていくと、その時だけは良いかもしれませんが、必ず流行れば廃れますから、自分のカラーで成功している訳ではありませんので必ず失敗します。

量販店の物とは違い、世の名の通っている人形師・甲冑師と言われる方々は、皆この様にして生みの苦しみを実感しながらオリジナルを生み出している訳です。

兜鉢・目庇(まびさし)・錣(しころ)・吹き返しまでは完成したのですが、鍬形にしようか名将の前立てにしようかと悩む訳です。

部品として何十種類以上とある訳で、それらが全て頭の中に入っていますので、頭の中で妄想いや想像しながら、組み立てていきます。

個人的には、こちらの長鍬形(ながくわがた)が好きで、そのスッと伸びたシルエットの美しさは抜群です。

現在では、この長鍬形と大鍬形の中間の中鍬形という鍬形が主流で動いていますが、中鍬形というのが出たのが今から25年程前で、それまでは長鍬形か大鍬形が主流で、長鍬形というのは大変好まれましたね。

この長鍬型だけでも大きさは様々ですので、大きさを合わせバランスを取りながら使用する事に。

この長鍬形を兜に取り付けるのですが、今回の兜鉢はアンチモニーといって、鉛をベースにアンチモン、錫を混ぜた合金の事で、いわゆる鋳物であり、明治初期には東京の地場産業として技術が確立したもので以前は定番の兜鉢でしたが、やはりこのアンチモニーの兜鉢を制作する職人さんが殆ど居なってしまい、鉄板の合わせ鉢が主流になってきました。

それぞれの素材の良さがありますので、私は使い分けています。

このアンチモニーの兜鉢に、鍬形を固定する穴を空ける訳ですが、もちろん機械など使わず手で開けます。

代々のオリジナル工具を駆使しながら穴を空けていく訳ですが、力は必要ですので一日に幾つも出来ません。

さて、こちらの兜の吹返しは京都西陣の高級金襴を贅沢に使用し、シンプルに大き目の菊飾りで装飾し、金襴も見える様にとしてみました。

金襴を裁断して、周りに赤い布を張り、金の覆輪を巻いて、蛇腹(じゃばら)という糸を巻いて、さらに金糸を巻いて、ポイントに小さな菊飾りを入れて・・・とこの部分だけでも単純に7工程で、それ以上にもなります。

吹返しの下には、牡丹の飾り金具を配してみたりしてみました。

後ろに回って、縅色は昔ながらの浅葱色(あさぎいろ)。

ホワイトバランスとモニターの関係で濃い水色に見えているかもしれませんが、優しく上品な浅葱色(あさぎいろ)です。

小札は金小札(きんこざね)で、よくご覧いただくと小さな山が沢山あるのがお分かりいただけるかと思います。

これは共吹(ともぶき)や共錣(ともしころ)とも呼んで吹返しと錣(しころ)が一体化されており、この山の形や幅、山数、湾曲のアールも全て計算されており、各々が独自の数字を導き出して形を形成し使用する訳です。

その小札には全て穴が開いていて、合計で何百穴となる訳ですが、その穴全てに糸を通して編む=縅ていく訳ですので、どれほど手間が掛かるかお分かりいただけるかと。

この山の大きさと穴の大きさは本体の大きさに合わせ様々で、それに合わせ糸も全て幅を変えていきます。

写真は三段になっているのがお分かりになると思いますが、通常は三段でこうしたところを省略し二段になっていたり、山の幅が大きくしてあり兜の大きさの割に太い糸で、縅の数を減らして安価にしてある物も見かけますが、ケース物を除き名の通った作者の物であれば、まずそういった簡略化はしませんのでご安心いただけると思います。

そして、噂の飛龍です。

もちろん木彫金箔押で、今では珍しくなりました。

プラスチック製の物はあるかもしれませんが、木彫金箔押はなかなか見かけません。

手にはしっかりと水晶を持っています。

龍頭(りゅうづ)自体も少なくなってきており珍しいのですが、木彫金箔押で水晶を持っているとなると、さらに珍しくなり兜や鎧のランクも上がります。

現在では、量販店やネット等で販売されている鎧や兜には殆ど付いていませんが、以前は普通に付いていて、昔は神様(守護神)をして崇められていたのですが、時代の流れと共に作り手もいなくなりつつあります。

こうして完成した『飛龍兜』ですが、どの様なお飾りとして仕上げようかと、台や屏風・弓太刀等を合わせてはやり直しとやっております。

以前、とある本でSNSやブログ等に「作る工程は商品の販売には関係ないので載せなくてもいい」と書かれていましたが・・・こうした事は書かねば分かりませんし伝わらないと思います。

量産品等で単なる商品として仕入れ、右から左へ流すだけならそれでも良いかもしれませんが、私たちは機械ではなく全て手仕事でひとつひとつ制作している訳ですから。

ちなみに・・・

飛龍は抵抗があるという方には、通常の木彫金箔押龍頭への変更も可能です。

これも、製造元だからこそ出来る技です。

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