こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
磐田市のK様より、秀月オリジナルの着用兜収納飾りをお選びいただきました。

こちらの着用兜は工房にて私が制作しているのですが、一般的に販売されているのは大きさが23号や25号で、さらに阿古陀(アコダ)型で楕円形の着用兜が殆どです。
秀月の着用兜は、大きさが30号となり一般的に販売されている着用兜よりも一回り大きく、形も丸ですので楕円形の阿古陀(アコダ)型よりも大きくドンとした構えになります。
私も着用以外の兜では阿古陀(アコダ)型の兜鉢を使用する時もありますが、同じ大きさの丸鉢の兜よりも、楕円形ですのでシルエットが細くなるので、そうしたシルエットを必要とする兜にと使い分けていきます。
そうした23号・25号といった兜は製造元がほぼ全て同じで、仕入れ先の問屋が違うくらいですので、右を見ても左を見ても殆んど同じになってしまい、違う所となると袱紗(ふくさ)の模様が違ったり、鍬形や吹返し等にプラスチック製の装飾が付いたり、忍び緒の色が変わったり模様が入ったりと、だんだんと奇抜な兜になっていきていますね。
ちなみに秀月では、袱紗(ふくさ)には昔から最も高貴な色とされる紫(古代紫)を使用し、シンプルでありながらより兜が引き立つ様にしてあります。
プラスチックへの塗装は、一見するとキラキラとして派手に見えますが、やはりあくまで塗装で鍍金とは異なりますので、そうした見た目のキラキラ系が好きな方には良いかもしれません。
殆どがプラスチックですので、とても安価で手間も掛かっていませんので、「原価は?」と聞かれるととても驚かれるかもしれませんが・・・何処の誰か分からない人が作り、見た目だけは派手で何故か価格それなりにするので、兜本体よりも収納箱や屏風の方にお金が掛かっていのでは?と思えてしまうのは私だけでしょうか。
そうした商品が量販店等に並び、キラキラとさせる訳です。
秀月では、そうした兜は制作しておりませんので、自社工房にて私が制作し適正な価格にてご案内させていただいております。

(懐かしい袋井店の工房で、中心にデンと座っているのが私です)
秀月が30号という大きな兜を制作しますので、他所は23号・25号で小さくなる為に比べられない様にと「着用兜」として、ひとくくりにされてしまっている訳ですので。
私も含め、全国に居る数少ない代々の甲冑師や人形師は、こうして手仕事で黙々と制作している訳で、それぞれの個性と特徴を生かし地道に腕を競い合って頑張っている訳ですが、全く関係の無い所で、機械でプラスチック製の見た目重視で安価な兜をポコポコと量産する訳ですから・・・これも時代の流れでしょうか。

こちらの着用兜は、中鍬形となり中心に龍が付きます。
この龍も、木彫金箔押龍頭(きぼりきんぱくおしりゅうず)といって、読んで字の如く木彫りで金箔が貼られており、手には水晶を持っています。
この木彫金箔押龍頭も昔から変わらない物で、現在ではこの龍頭を作る職人さんも殆ど居なくなり、その分価値が上がりますので、
この龍を使用するとなると高価になってしまう為、現在では龍頭の付かない兜が主流になってきていますね。
やはり兜をご存知の方は、この龍頭が「守り神」であるという事もご存知ですので、あえて龍頭の付いた兜を選ばれたりし、実際に私が制作してる「北米レクサス オリジナルモデル」は現地からは「木彫金箔押龍頭は兜の象徴でもあるので必ずつけて欲しい」と必ずリクエストが入りますので。

(実際に紹介された記事です)
縅色(おどしいろ)も、こちらの兜は赤糸に三色と裾に紺糸を使用し、魔除けの赤の意味を持たせながら、三色(さんしき)という一本の紐の中に三色のいろを使用する紐で縁を取って、裾は紺色で引き締めていきます。
この時の糸も、上質な糸でないと美しい色は出ませんので、しっかりと厳選してあります。

兜を引き立てる屏風は、美しい艶やかな黒塗りに彫金の龍と虎を配しました。
お飾りの主役は本体ですので、兜より目立つ事はせず、しっかりと兜を引き立てお飾りを盛り上げております。
さらに収納箱兼お飾り台は・・・

屏風と同じく、美しい艶やかな黒塗りに龍の彫金。
この収納箱で幅が約60cm程ですので、同じその上に飾る兜であれば23号や25号と小さくせずとも、30号として大きく見栄えあるお飾りにされてはいかがでしょう。
それでいて、ほぼ同じ様なお値段(あまり金額の事は言いたくないのですが・・・)であれば、私であれば大きな兜を選びます。
こうして完成する他の兜同様の秀月の着用兜ですが、「やっぱり立派だよね」と有難いお言葉をいただきます。
デザインから制作まで、楽しみながらも生みの苦しみというのはありますが、こうしてお喜びいただきお選びいただける事のは本当に嬉しい事ですね。
その様な嬉しいお声を糧に、黙々と制作しております。
K様この度は、秀月の着用兜をお選びいただき誠にありがとうございました。
可愛いお子様の為にと、一生懸命お創りいたしましたので、秀月の着用兜で楽しい初節句をお祝いくださいね。
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