こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
お雛様で盛り上がっている最中ですが、工房では新作の兜の制作が進んでおり、五月人形の展示販売開始は例年通り2月中旬以降から徐々に新作の五月人形に飾り変っていきますので、今しばらくお待ちくださいませ。
先ずこちらは、とある兜鉢の生地ですが、まだ塗装をしていない状態ですが、何枚かの鉄板を矧ぎ合わせて出来上がっているのがお分かりいただけると思います。
これを合わせ鉢(矧ぎ合わせ鉢)と呼ぶ訳ですが、この工程で既に幾重もの工程を経て完成しております。
他にも素材はアンチモニと言って、アンチモニと鉛、錫(すず)の合金から作られる鋳物を使用した兜鉢で、金属とは異なり細かい装飾の加工がしやすく、鍍金も施しやすいため、見栄えの良い宝石箱や、オルゴール、トロフィーなどの製品にも使用されます。
このアンチモニの工芸品は多くの鋳物師、彫刻師が東京に集まり自分たちの技術を競い合っていたため、製品の質はどんどん高まり、明治時代の最盛期には、海外貿易品としても重宝される、東京の特産品となりました。
合わせ鉢・アンチモニ、どちらが良いという事では無く、両方とも日本製で高品質な物ですので形状や用途に寄って使い分けます。
さて、今回は合わせ鉢ですが、大きさや形状も様々で、兜自体を何色にしようかと悩むわけですが、結局のところ昔からの定番である黒地を皆さん間違いなく選ばれますね。
ただ、個人的にちょっと遊び心も芽生えてしまうのでスカイブルーメタリックを・・・これが出来るのも製造元であるという証と強みで贅沢な遊びかもしれませんが、個人的に楽しんでいるだけで販売するつもりはございませんのでご安心を。
さて、写真の兜鉢の生地には幾つか穴の開いているのですが、その部分には上の写真の様に金の金具が入ったり、銀のプレートの上に下向きの矢印の様な「篠垂れ(しのだれ)」という金具を付けたり、頂点の「八万座(はちまんざ)」という金具を付けて兜鉢は完成します。
この時、先ず兜鉢にどれだけ手間が掛かっているかで兜の値段も変わってくる訳ですが、中には安くするために海外で・・・という物もある様ですが、秀月は子供大将も市松人形も鎧も含め兜自体、兜鉢の制作も塗装も仕上げも全てが安心の日本製ですのでご安心いただけます。
そして、こちらの兜鉢はまた少し形状が異なりますが、基本的な創りは同じで大きさや形状が異なり、兜によって使い分けていきます。
写真はオーソドックスな兜鉢ですが、若干高さを低くし広がりのある形状です。
そして・・・
こちらは総覆輪鉢と言いますが、下地の色も変え筋という筋に金の覆輪が巻かれていて、さらに星と呼ぶ金色のピンの数も圧倒的に多くなり、頂点の八万座の下に一枚銀のプレートをかませて・・・と、圧倒的に高価な兜鉢となります。
しかし、高価ではありますがやたらとプラスチック製のテカテカとした薄っぺらい光沢ではなく、金属特有の落ち着いた奥深い渋さのある光沢です。
これはほんの一部の兜鉢ですが、同じ様に見える兜鉢でも、それぞれ大きさも使用も異なり、目庇(まびさし)と呼ばれる庇(ひさし)部分の形状も変えていきます。
中には鏡面磨きといって、大変美しいものもあり、さらに純金鍍金となると美しさと高級感が増しますが、それに合わせて値段も上がりますのが、それぞれ使い分けますので。
こうした物も全て金物で基本的に手仕事で組み立てていきますので、手を切った、指先を切った、金具が刺さった等、相手は金物ですので試作の時などは日常茶飯事ですのでオロナインが手放せません。
それに比べオールプラスチック製は、機械でポコポコと型から出てくるだけで、穴を開けるにしても力は要りませんし、こんなに楽なものは無いと思えるほどで、その分、形や塗装をやたら派手にして目を惹く様にしてあるのが殆どですね。
そうした事を見比べていくと、違いが分かってくると思います。
私を含め関東の甲冑師や京都の甲冑師が何名かいらっしゃいますが、それぞれ業界では名の通った著名な方達で見事な鎧や兜、変わり兜を制作しておりますので。
なかでも京ものと呼ばれる京甲冑は、材料や製法等にしても少し異なり独特な世界観を持ち、桁が一つ多くなりますがそれほどの作品ですので展示ご案内する店舗も選ばれてきます。
弊社では、京甲冑ですと平安住一水の鎧・兜 正規販売店として展示ご案内させていただいております。
各々が特徴があり見事な作品ですので、決して大幅な値引きや安売りをされる作品ではありませんので、逆に安売りをされているのを見たら話しだけ聞いてスルーされるのが賢明でしょう。
職人の価値を守るのも我々の務めでもありますし、だからといってやたら高額にする訳ではなく、創りに合った適正な価格にてご案内させていただいております。
それが400年の伝統と信用です。
商品と作品の違い・・・お雛様でも言える事ですが、コレって最も重要なポイントなんですね。
さて、今季はどの様な兜を制作しお飾りとしてショールームに並べようかと、大変さ半分、楽しみ半分で黙々と制作しております。
お子様の為に、何処で誰が制作した兜や鎧を選ばれますでしょうか?
十七代目 人形の秀月は皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。
伝えたい日本の心 美しい伝統
人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月