こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
工房では、2月中旬からの新作五月人形の展示に向け、黙々と制作しております。
写真は、覆輪といって鎧や兜の目庇(まびさし)や吹返しの周りに巻く金属ですが、上が通常の覆輪で下が新しい縄目という覆輪です。
縄上に模様が出来ているのがお分かりになると思いますが、数ミリの太さのものにこうして縄目の模様を入れる事自体が難しく、特殊な技法ですので、弊社と忠保のみのオリジナル特注品となります。
そうなると当然、この覆輪を使用する鎧や兜等もこの2社のみのオリジナルとなる訳で、こうした事も親戚同士である強みですね。
先ずは、グルグルに巻いてある覆輪をピンと伸ばす訳ですが・・・
伸ばし過ぎると模様の凹凸が分かりづらくなってしまいますし、かといって伸ばしが緩いと真っ直ぐにならないので仕事にならないしで、絶妙な力加減と2人で伸ばしますので息を合わせる事が重要なんです。
デリケートな覆輪でもあるので、ちょっと気合いを入れ過ぎて伸ばそうとすると、バチン!と切れてしまい引っ張る私が後ろにひっくり返るか腰をやられてしまいますので。
こういう力加減というものは、何キロで引っ張るなどという説明書はありませんので、失敗し痛い思いをして体で覚える事が基本です。
これを何mで何本か伸ばし、後は各長さに切って使用していきます。
この覆輪を切る事も、よく研いだ切れる工具でしっかりと切らないと、覆輪が潰れてしまい何cmか使えなくなってしまうので、材料を無駄にしないという、こうした事にも普通に神経を使うのが職人の仕事ですね。
工具箱を見た時に、乱雑に工具が入っていたり、手入れがされていないのは仕事が下手な証です。
そうやって全て手仕事で様々な部品を制作していく訳ですが・・・先ずはこちら。
写真はある試作の兜の一部ですが、通常の覆輪を巻いてある状態。
試作ですので各所の仕事が甘いですが、普通に綺麗な金の覆輪ですね。
そしてこちら。
こちらも試作ですので仕事が甘いですが、縄目の覆輪を使用したもの。
少し、叩き過ぎたところもありますが、表情が全く異なるのがお分かりいただけると思います。
今までとは異なる高級感も出ている様な・・・
後はもう少しこの覆輪の扱いを練習して、どの鎧や兜にどの程度使用するかを考えていきます。
全てに使用すると、くどくなってしまうので。
この縄目覆輪は2色展開でいきますので、先ずはこれらか制作する兜に使用してみようと思い、工房でトンカン金槌で叩きながらショールームにも音を響かせ、失敗を繰り返しながら手を切ったりして制作しております。
お陰様で、左手首が少し腱鞘炎・・・というのもいつもの事なので、それらを含めムッとした顔をして実は内心楽しんでおりまして。
ご来店のお客様から時折、「五月人形はありますか?」というお声がありますが、上記の様に新作の兜を現在絶賛制作中となります。
五月人形の展示販売開始は、昔から例年通り2月中旬頃からとなりますので、焦らず惑わされず今しばらくお待ちくださいませ。
その店の販売の仕方にもよりますが、十七代目 人形の秀月は、前年等の在庫品を早期販売等という名目で、値引きしたり安価に販売するような事はいたしておりませんので。
やはり、新作をお選びいただきたいので。
さて、ストーブに当たりながらお子様の為にと、黙々と制作いたしております。
十七代目 人形の秀月は皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。
伝えたい日本の心 美しい伝統
人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月