こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
埼玉県越谷市のE様より、雪洞の修理を承りました。
かなり年代物の雪洞ですが、ホヤが破けてしまったとの事でブログよりお問い合わせをいただきました。
修理やリメイクの場合、メールの場合は先ず写真を拝見させていただき、それから現物を精査し修理可能であればお見積りをお出ししておりますので、物も見ないうちから「だいたい幾らくらい・・・」といった概算でのお見積りはしておりませんのでご注意下さい。
E様の場合も、何度かメールにてやり取りをさせていただき、実際にお送りいただいてお見積りをお出しし、了解が得られましたので修理させていただきました。
細かく言うと菊灯になるのですが、そこはあまり問題ではありませんので。
ホヤの張り替え等の修理の場合、基本的には一対での修理をおススメしております。
というのも、片方だけが真っ白の新品で片方が年期の入った色だと、左右非対称になってしまい見た目にもよろしくないので。
さらに、E様の様に絵が入っている場合ですと、全く同じには出来ませんので似たような感じでの手描きとなります。
もしくは、既存の絵を使用する方法もありますが、やはりそのお雛様に合わせてあるものですので、出来れば似たような絵を描かれる事もおススメします。
このホヤの修理ですが、簡単そうに見えて実はとても難しく、熟練の専門の職人さんでなければ上手く出来ません。
先ずは、枠に傷を付けない様に綺麗に剥がす訳ですが、昔の糊は完全にカチコチに固まってしまっていますので、剥がすにもコツがいります。
この段階で、綺麗に丁寧な仕事をすることで、次の仕事らスムーズに運ぶ訳ですので。
そして、こちらが綺麗に全て剥がした状態。
こうしてご覧いただくと、ひとつの桜の絵がちゃんと繋がっているのが分かりますね。
これも当時の職人さんが丁寧な仕事をし、高価な雪洞である証。
こういう事も、知っているのと知らないのとでは、雲泥の差がありますので。
たかが雪洞、されど雪洞です。
お飾りからすると、灯りを灯す脇役的な存在かもしれませんが、きちんと職人さんが制作したものは見る人が見れば分かり、雪洞としての存在感はありますから、知らずに選んでしまうとお飾りを台無しにしてしまう恐れもありますね。
そして、絵を描いていく訳ですが、これも専門の方がしっかりと手描きて描いていきます。
そうして修理が完了した雪洞(ホヤ)がこちら。
桜自体も同じ様な配色とし、再度バランスも整え少し大振りにしました。
こうしてご覧いただくと、新品と言われても分からないと思います。
桜も満開桜で、メリハリも付いてシャキッとしました。
こうした事も私の好きな『温故知新』の精神ですね。
元々が現在の雪洞とは異なり、かなり大型の雪洞ですので、見応えのある雪洞へと生まれ変わりました。
これで殿と姫の横に置き灯りを灯せば、満開の桜が咲き誇る風情ある雅やかな世界が生れます。
現代風の行灯(あんどん)や燭台(しょくだい)も使い方によってはお洒落ですが、こうした雪洞や菊灯となると風情が生まれ、「THE お雛様」で好きですね。
E様この度は、誠にありがとうございました。
これでまた数十年お飾りいただけ、年月と共に良い風合いへと変化していきますのでお楽しみください。
秀月の古式ゆかしいお雛様。
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人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月