お雛様のお道具たち

こんにちは、人形の秀月 十七代目です。

皆さんいろいろなお店をご覧になられており、その中でも「何処に行っても小さくて同じ様なものばかりで・・・秀月さんに来てみて良かったです。でないと、ああいうのがお雛様かと思うと正直残念で。やっぱりここに来ると人形屋さん・専門店というのがよく分かります。全然違いますから」とおっしゃっていただけ嬉しく本当にありがたい事です。

さて、お雛様の楽しみというと、お道具類を出してお飾りする時も同じだと思います。

そっと開けると、綺麗なお道具が入っていると嬉しいものですね。

今でこそ、お道具類を飾らないのがシンプルでカッコイイ?のかお飾りする場所の問題?なのか、簡略化されてしまっているお飾りも多くなってしまいました。

個人的には「寂しいなぁ…」と思う事も多く、せっかくの桃の節句の雛祭りですので、何か添えてあげたいものですし、本来はそれぞれに意味のある物がお道具として揃えられていましたので。

昔の様な七段飾りでしたら嫁入り道具までも揃い、駕籠や牛車でお嫁入りの様子を表現していたものです。

現在では、さすがに七段飾りは少なくなりましたが、親御さんではなくお子さんにとっては憧れのお飾りではないでしょうか。

何よりも見ていても楽しいし、うれしいひな祭りの歌にある様に、お飾りに夢があったとも思います。

これも時代の流れかもしれませんが、今現在出来るお飾りの中で楽しんでいただければともと思います。

大きくても小さくても、作り込まれたお道具は良いもので、見ているだけでも楽しいものですね。

こうした昔ながらの簡単に言うと木製の三方飾り。

瓶子に口花をさしただけのものですが、美しく雅やかな雰囲気を醸し出します。

シンプルな木製の菱台に菱餅ですが、これだけでも様になりますね。

違う意味で高級な部類になりますが、伝統的なお道具のひとつとで、どんなお部屋にお飾りされても合うものとなります。

現在は、こうした口花に水引に桜といったものもありますが、これはこれで美しく丁寧に作り込まれたものであれば、可愛らしくも華やかな雰囲気になりますので、全体のバランスを見ながらお飾りにより使い分け仕上げていきます。

こちらは火焔太鼓(かえんだいこ)ですが、お飾りに楽人が居る時に使用します。

なかなか目にすることが無くなってきてしまいましたが、細かな作りで小さいながらも存在感があり、個人的にも好きなお道具ですね。

御所車も趣向の凝らされた物も置く、昔は牛車が多かったですが殆ど見かけなくなってしまいました。

熨斗目に桜柄で、個人的に優しく感じ好きですね。

こういった木目のものであったりと、風情もあって良いですね。

かと思いきや、こちらは親指の先ほどの大きさですが牛車です。

こんなに小さいのですが手描きの柄も入り、小さいながらも牛がちゃんと引っ張っている立派な牛車。

重箱も立派なものがあるのですが、あえて可愛らしいものを。

小さな重箱ですが、舞桜と月に兎が描かれ紐も色違いの二重紐に、房も色を変えてありますので、これほど小さくとも手が込んでいて、月に兎が物語性もあり可愛らしいですね。

個人的にも大好きなお伽犬(おとぎいぬ)ですが、座形彩色の対の犬のことです。

胡粉彩色や金銀箔押しをした美しいものもあり、お雛様の守護神ともいわれ殿と姫の左右に置きますが、私はお飾りの前に置いたりしていました。

犬箱あるいは犬張子ともいい、香箱の様に蓋がとれ、御守札などを入れ、嫁入り道具としても重要な役目を持っていました。

当店でも写真のお伽犬が、一対だけ昔からあったので私のお気に入りとし、もう同じお伽犬は制作できないので非売品として展示して遊んでいたのですが、「どうしても、どうしても売って欲しい」というお客様がいらっしゃり、泣く泣く手放してしまい現存するお伽犬もあるは知っているのですが、この雰囲気の雅やかなお伽犬ではないので私は妥協してまで使用しません。

こうして書くと永遠に書けてしまうのですが、他にも行器(ほかい)は丸い筒状で外反りの脚が付いた容器で、平安時代の代出用の食物の容器と、貝桶(かいおけ)は6角筒形の容器で、貝合わせの貝を入れる容器一対で貝合わせとは蛤貝の内側に絵や歌が書いてあり、同じ絵の貝を合わせる遊戯です。

この行器や貝桶も蒔絵が施されていたり、螺鈿細工が施されていたり、小さな貝で貝合わせの貝が入っていたりと様々です。

中には本当の蛤で描かれたものもありますが、ここまでくると作家さんの作品となりますが、そうした本物を取り揃えられるお客様もいらっしゃいますので。

最近のお道具類は、確かに見た目は可愛らしい物が多いですが、きちんと手間をかけ作りこまれている事とは別です。

それが某国製であったりすると尚更で、質より量か量より質かでそのお店の質も変ってくるかと思います。

せっかくの初節句のお祝いですので、きちんとしたものでお祝いしていただけたらと、400年続くの製造元として作る苦労を痛いほど知っているだけに、ショールームではお客様には売り文句ではなくメリット・デメリットも踏まえ、きちんとした価値をお伝えしておりますので。

商売人ではなく、根っからの職人ですもので。

相も変わらず二階の工房で作業をしながらですので、年季の入った前掛けをしたまま降りてきての接客となってしまいますが、職人の一張羅ですのでご理解いただけたらと思います。

せっかくの初節句のお祝いの品ですので、ご家族皆さんでワイワイと楽しく色々なお店をご覧になる事もお節句の醍醐味です。

いろいろなお店をご覧になりお話しを聞いて、お店の質、お人形の質等を確かめられるのも楽しいですから。

十七代目 人形の秀月は皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。

伝えたい日本の心 美しい伝統
人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月

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