こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
周智郡森町のY様より、お雛様の男雛の髪の毛の修理を承りました。

Y様は最初、お電話でご相談をされてきました。
「殿の髪の毛が解けてしまって・・・」という事で、森町といえば近くですのでさっそくお持ちいただいて拝見させていただく事に。
風呂敷に包んでお持ちになりお渡しいただくと、まず昔の段飾りのお雛様というだけあり、とても大きく立派なお雛様です。
両手で持つくらいの大きさのお雛様で、衣装も素晴らしく一瞬で絢爛豪華なお雛様というのが分かりますね。
さっそくお顔を拝見させていただくと、髪の毛を縛っている紐が外れてしまい、ボサボサになってしまっていました。

通常ですと、あまり専門用語を使うと分かりにくいですので、長い状態の毛(絹)を頭に植えて結んで切るのですが、この状態ですとそうもなかなかいきません。
だからといって、髪の毛を全て取り植え直すとなると、それだけで費用がかさんでしまいますし、取り除いている時に石膏の綺麗なお顔に傷や汚れがついてしまっても大変です。
という事で、この状態から。
もちろんこのままでは出来ませんので、クセを取り伸ばして・・・という作業になる訳ですが、どうも皆さん簡単に出来るとお思いの方が多い様ですが、全て手仕事ですから想像以上に手間と時間が掛かるものですので。
そして、良いお顔ほど良い素材と丁寧な仕事で手も掛けられておりますので、修繕する時も同じ様に手を掛けていく訳です。
そして修繕が完了したお顔がこちら。

髪の毛を綺麗に束ね結い上げて結ぶ、まさに結髪です。
それにしてもこの男雛、良いお顔立ちですね。
ほんの少し頬がふっくらとし、それでいてキリッと引き締まった表情でいわゆる美しいお顔です。

凛とした表情で、お顔の白さもカチッと真っ白ではなく、優しい白さでまつ毛や眉毛、髪の毛の生え際まで、とても丁寧な仕事ですね。
この優しい白さは、何度も重ね塗りをして出せる柔らかさです。
口を開け少し微笑んで、美しい紅の色。
このお顔も、今でも十分通用するお顔で、流行り廃りの無い美しいお顔ですね。
ただ、今時の極小のお人形ですと、お顔も小さくなりこの子の三分の二程の大きさになってしまいますので、そうすると小さ過ぎてお顔の表情、いわいるお顔立ちを創るのも難しくなってしまいます。
ですので、私もよくお客様にご説明させていただくのですが、何でも小さいのが良いのではなく、バランスも含め丁度良い大きさというのがあり、それはお顔だけでなくお人形の衣装であったり、それは五月人形も同じです。
逆に、大きければ良いというものでもありません。
そのものにとって、バランス良く丁度良い大きさというものがあり、それらを見極め仕上げるのが本来専門店のプロの仕事で、「人気がありますから」と、とりあえず大・中・小と同じお顔を揃えお勧めする様では・・・私のお付き合いさせていただいている老舗専門店様や職人仲間内ではありえませんから。
それにしてもこの子、美しいお顔ですね。。。
こうして無事に修繕も完了し、きっとこの子も喜んでいる事でしょう。
Y様この度は、誠にありがとうございました。
生まれ変わった様に綺麗になりましたので、どうぞこれからも末長くお飾りくださいね。
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