東京都八王子市のY様はお雛様の修理

こんにちは、人形の秀月 十七代目です。

東京都八王子市のY様より、お雛様の修理を承りました。

Y様は5月に、弊社ホームページの「人形の修理・リメイク」をご覧になりお問い合わせをいただきました。

ご相談内容は、髪の毛の乱れと衣装のシミ(汚れ)です。

先ず写真をお送りいただくと、写真の様に髪の毛が乱れてしまっております。

それにしても、とても綺麗で上品なお顔のお雛様で、流行り廃りの無い昔からの幸多き良いお顔で個人的にも好きなお顔ですね。

この子の右側のところの髪が乱れてしまっており、ここが乱れてくると・・・

後ろもこの様に少しずつ乱れてきてしまい・・・

最終的には、この様に下まで乱れてきてしまいます。

この時に、チョロッとでてきただけだからと、指で引っ張ったり、2~3本だからと切ろうとするのは絶対にお止めください。

後々取り返しのつかない事になり、その状態で持ち込まれると修繕するのに驚くような金額にもなってしまうかもしれませんので。

ただ、どの様な状態であっても元々が良い(高価)お顔ですと、それなりにしてしまうのは素材が違ったり、塗りが違ったり等と手が込んでいる事がありますので仕方がありません。

さらにY様の場合、襟の所等が黄色くなってしまっていたりもしましたが、残念ながら衣裳等のシミや汚れを取り除く事は不可能となります。

私自身、以前とある衣裳屋に勤めていた事があり衣裳の汚れ落としや染み抜き等もやっていたことがありますが、お人形の場合は裂地の裏に裏打ちといって、紙などが貼られていおりますので、人間のお着物とは勝手が違います。

人間のお着物であれば、薬品を使いある程度までは落とす事ができますが、それを同じ様に薬品を使うと中の紙等ががボロボロになってしまいますので。

カビが生えたといっても、拭き取れば表面的には綺麗になりますが、胞子は残っていますので必ず再発しますし、その胞子を殺すとなると薬品を使用せねばなりませんので、場合によっては強い薬品で色が飛んでしまったり、裂地が傷んでしまう恐れがあるという事は、皆さんあまりご存知ないのかもしれませんし、お店側も教えてくれないかもしれません。

人間のお着物でしたら、バッと広げ汚れやシミを落とし、終わったらバッと広げて乾かすのですが、もちろん時間が経ったものは難しくなり、お人形では脱がせてそういうことは出来ませんので。

どんな薬品で、どんな方法でと実際にやっていましたのでやり方は分っているのですが、勝手が違うので出来ないという事なのです。

中には「着せ替えてもらえませんか」というお問合せもありますが、どの様な裂地を使用し男雛と女雛のどちらかだけが新しいのでは可哀想ですし、そもそもお雛様は腕が曲がっていますが、これは中に太い針金が入っており、それを一気に曲げて腕の形を作っていますので、それを伸ばしてというのも形が崩れますし、メーカーや作者によっても仕立てや着せ付けも異なりますので、弊社では着せ替えはいたしておりません。

よくても「裳」の交換くらいですが、それでも作者により付け方や仕様が異なりますので、難しくなりますので、お断りする場合もございます。

大切なお人形を痛めてしまっては元も子もありませんので。

さて、そうして修繕が完了したお顔がこちら。

髪の毛も綺麗にまとまり、お顔も晴れやかになりました。

この子の表情も明るくなった様にも思います。

後ろも綺麗にまとまり、新品同様になりました。

この結髪(けっぱつ)という仕事は、やはり熟練の技が必要となり、細い絹糸を櫛を通してまとめますので、人間と同じなんです。

ただ絹糸は細く軽く繊細ですので、余分な力が掛かると直ぐに切れてしまいますので。

ですので、長い絹糸を綺麗にばらけさせて、全てを綺麗に伸ばしておいて・・・と、実は途方もない作業なんです。

その作業はなかなか実際に目にすることは無いと思いますが、実際にご覧いただくとどんなに小さな事でも丁寧に手間を掛け、「これなら決して高くはない」と思われると思うのですが。。。

私自身もそうですが、職人というのは目先の利益ではなく、自分が満足する仕事ができ人様のお役に立て、それに対してご褒美をいただけるという考えなので、義理と人情もあり商売人ではないんですね。

そして、Y様から嬉しいメールもいただきました。

昨日、修理していただいた雛人形が届きました。
乱れた髪を丁寧に美しく整えていただき、感激いたしました。
秀月様に修理のお願いをして良かったです。
小さい頃から毎年雛人形に「来年会う時は、ピアノをもっと上達しているようにするね」と約束していました。それは今も続けています。
この先も一生大切にします。
ありがとうございました。
また何かありましたら、ぜひよろしくお願いいたします。

ある事から、「音楽をされているのですか?」という話題になり、ピアノを教えていらっしゃるそうで。

Y様の様な優しい方でしたら、きっと音色も優しく、多くの生徒さんに慕われている事でしょう。

Y様この度は、誠にありがとうございました。

これからも大切に末長くお飾りくださいね。

何かありましたらご連絡ください。

人形の修理・リメイクにつきましては、こちらより過去の事例を含めご覧ください。

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