こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
茨城県石岡市のS様より、弓太刀揃いの修理を承り嬉しいお便りをいただきました。

S様は最初、ホームページをご覧になりお問い合わせをいただきました。
かれこれ何十年も前のお飾りですが、弊社でお求め頂いた子供大将飾りで「矢羽根がボロボロになってしまって・・・」との事で。
品物をお送り頂くと、確かに矢羽根がボロボロになってしまっておりました。
しかし、懐かしい箱だなぁ・・・と思いながら検品していくと、他にも幾つか気になるところが。
ただ、古い物ですので同じ物は無く、矢羽根のみを取り替えるといっても同じ模様の矢羽根は無く、それならばと急遽弓自体を似たような弓に取り替える事に。
といっても弓も長さや太さ等、全く同じ寸法の物がありませんので制作する事に。
なんとかお披露目には間に合わせてあげたいと思いつつ、特注の弓が用意できたところで差し替えです。
さらに弦も緩んでいたので張り直し、籐が切れかけていた所も補修し、何とか無事に納める事ができました。
すると、後日ご丁寧にお写真と嬉しいお礼のメールが。
先日は矢羽、弓の修理で大変世話になりました。
お掛け様で初孫の初節句のお祝いも無事に出来て家族皆で喜んでおります。
息子から孫に引き継いでもらい、嬉しい限りです。
実は結婚12年目でやっと授かった長男に私の母が買ってくれた物でした。
その気持ちも初孫に引き継げた事に感動しております。
本当にありがとうございました。
写真を拝見すると、確かに十六代目の父が制作した見事な子供大将です。
彫金霧島 黒小札 瑞晁縅 長鍬形 木彫金箔押龍頭
振り付けも間違いなく父の振り付けで懐かしいですね。
お飾り台と屏風は黒塗の四君子の絵柄で、今では手に入らない上品でおめでたい絵柄ですね。
向って右下にある作札は、アクリルの中に金箔押をし、護守護 古代武者人形 十六代目 秀月と書かれた非常に珍しい作札です。
一時期、特注で制作した作札ですので現在では手に入りません。
これだけでも大変貴重な作札で、今でこそアクリルにレーザーで彫られた作札を見かける様になりましたが、何十年も前にアクリルで金箔押を使用していた訳ですから。
それも厚さが3cm以上ある極厚の高級アクリル素材です。
さらに貴重な物は向かって左側の陣羽織です。
鏡龍という京都西陣の高級金襴を使用したもので、白と紺の二色の金襴を使用し、ここからが凄いのが全て『秀月』の文字が織り込まれている事です。
これも特注で織られた金襴で、当時はお雛様にも同じように『秀月』の文字が織り込まれた金襴を使用しておりました。
これも現在では織ることが出来ないので、非常に貴重な陣羽織です。
久し振りに見たなと感動してしまいましたが、どれもこれも非常に綺麗で保存状態も良くて。
こうして再び会えるというのも嬉しいですね。
こうして、遠く茨城県でも大切にしてくださるお客様に秀月は支えられている事を実感いたします。
S様の子供大将は、お飾りの全てが現在ではお金を出しても手に入らない物ばかりで、今でこそ様々なところから子供大将と呼ぶ人形が出ていますが・・・これが本来の一世を風靡した伝説の秀月の子供大将です。
S様この度は、誠にありがとうございました。
仕事冥利に尽きるお言葉もいただき、あらためてこの仕事の大切さを感じました。
どうぞ嬉しい初節句をお祝いくださいね。
また何かございましたらお気軽にご連絡ください。
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