こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
茨城県のA様より、嬉しいお写真をいただきました。
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A様とは最初、2009年に現在では制作できない大変貴重で珍しい破魔弓飾り、『桑弧蓬矢』をお選びいただいたのが始まりです。
当時はまだブログも珍しく、ネットショップというのもほとんど無く、もちろんスマートフォンはありませんでしたので、デジカメで撮影しSDカードでパソコンに取り入れ記事を書くという作業で、こちらの桑弧蓬矢の記事を書いたところ、A様が初めてお問い合わせ下さりお選びいただきましたので、大変記憶に残っております。
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こちらがその時の高級破魔弓飾り『桑弧蓬矢』ですが、現在では残念ながら手に入らないのですが、個人的にも好きなお飾りでご紹介させていただきました。
シンプルな出し飾りだからこそ、素材から厳選され必要な手間を惜しまず、しっかりと丁寧に作り込まれたもので、木製の似た様な?玩具の様な?破魔弓が出回っておりますが、ここまで意味を持ちこだわり繊細には作られている破魔弓は見ません。
大きさは、魔除けの赤毛氈を敷いた状態で間口:75cm 奥行:41cm 高さ61cmとなり、金箔押屏風も全てが含まれひとつとなった美しいお飾りです。
素材は
弓・・・桑の木 籐巻
矢羽・・・蓬葉和紙仕上
弦巻・・・籐製 手編み
矢尻・・・木彫竜 朱雀 虎 玄武
といった具合に凝りに凝った仕様で、今話題の白木でもこちらは桑の木を使用しておりますので、経年と共にとても良い風合いとなり、今制作するとなるととんでもない金額になってしまいます。
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矢尻には四神となる、竜・朱雀・虎・玄武がひとつひとつ彫り込まれております。
さらに
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矢羽の部分が四色に分けられているのは、四神の色を表しており、弓を中心に置きその四本の矢には古来より伝えられている東西南北をそれぞれ護る四神を表している訳です。
東・・・青龍(青)
南・・・朱雀(朱)
西・・・白虎(白)
北・・・玄武(黒)
このお話をさせていただくと、「祭りの山車と一緒だ!」と気付く方もおられますが、おっしゃる通りです。
この四神に、弓の房の黄色を加え五色となり、五色は仁義礼智信を表す伝統の色。
ちなみに、この四神の色は相撲の土俵の房にも見る事が出来るというのも、格式の高さがうかがえますね。
それだけに、位の高いお飾りと言っても過言ではない破魔弓飾りです。
その昔、男の子が生まれると桑の木の弓で蓬の矢を四方へ射て、将来四方へ飛躍する事を願いお祝いしたという事から制作されました。
これほどに意味いわれがきちんとあり、ご説明させていただくと、お正月飾りは現在の様に意味も無くデザイン化された物では無く、疎かには出来ないという事がお分かりいただけると思います。
お正月・お節句のお飾りというのはこういう事で、それが忘れ去られとにかくデザイン重視となり、説明の無いただ可愛いだけの物になりつつある事は残念ですね。
そしてA様は
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こちらの、同じく現在では制作できない大変貴重で珍しい『木彫り兜』も同じ様に選ばれました。
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あえて、何の装飾品も付けず木の美しさと彫りの美しさだけで表現する、玄人好みの兜です。
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全てに匠の技が光り
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シンプルなだけに誤魔化しは通用しませんので、その価値がお分かりの方は間違いなく選ばれますね。
デザイナーや大工さんといった、物が分かる方によく選ばれておりました。
こちらの兜をオリジナルのガラスケースに入れるとこの様に。。。
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秀月オリジナルの木彫り兜となり、ショールームでご説明させていただいていると、それを聞いていた後ろのお客様からもお選びいただくという、大変ご好評いただいていた『桑弧蓬矢』と『木彫り兜』でしたが、個人的にこうしたものが好きで売れる売れないは関係なく、自己満足用にと何気なく特別仕様で制作していた事が急な展開になりまして。
最初から売れるものを作ろうという媚びる姿勢は、お客様に伝わるとともに感覚も鈍ります。
ただし、この場合媚びるというのは高飛車という意味でなく、最初の入り口が「これなら売れるであろう」という商売っ気の事ですので。
こうした思いもA様には伝わり、ご兄弟分としてそれぞれ1セットずつお選び下さいました。
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実は、張り子の虎も。
もちろん、秀月オリジナル お名前立札(木札) オルゴール付も。
その子たちが、これだけ立派に育ちましたとお写真をお送りくださいました。
あの時のお子さんが、こんなに元気に立派に七五三を迎えられて、なんだか私も嬉しいですね。
現在は、もう少し大きくなられているかと思いますが、こうしてお子様の成長のお手伝いができるという事は仕事冥利につきますね。
現在でも「この子のお雛様を秀月さんで買って。お顔がとても良かったからこの子の子供にも秀月さんのお雛様をと決めて来ただよ」とご来店される方が非常に多いのは、本当にありがたく嬉しい事です。
先人たちがその時代の中で苦労しながら伝えてきた、代々続く『秀月』という何も感謝せねばなりません。
これらを励みに、より精進せねばと思います。
A様この度は、貴重なお写真をありがとうございました。
いつかお会いできる日を楽しみにしております。
十七代目 人形の秀月は皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。
伝えたい日本の心 美しい伝統
人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月