羽子板をお飾りする理由(わけ)

初節句をお迎えのお客様におかれましては、先ずはお正月飾り(羽子板・破魔弓)かと思いますが、その前に羽子板をお飾りする理由(わけ)というのを少し。

羽根つきに魔除け、厄除けの意味があるってご存知でしたか?

女の子のお正月飾りの羽子板をお買い求めされるお客様の中で、「どうして羽子板を飾るんですか?」とご質問をいただく事があります。

これは、殆どのお客様が疑問に持たれている事で、それを知らずに単に流行り物で可愛いだけといった羽子板の形をした板に、飾りが付いた物をご購入されてしまう事になってしまうので注意が必要ですね。

本来は専門店であればこうした事もきちんと説明してくれるはずですが、「流行に任せて売ってしまえ」とばかりに販売されているオンラインショップや販売店を見かけるのは残念な事です。

まず、羽子板は赤ちゃんが誕生して初めて迎えるお正月に向けて贈られます。

時期的には、旧暦の12月から1月の間。

この旧暦の12月から1月の間は、十二支による暦の上で「丑・寅」にあたり、いわゆる「鬼門(よくない結果がおこりやすい時)」の時期にあたります。

羽子板には、その時期を生命力の弱い赤ちゃんが無事に通過できるようにという願いがこめられているのです。

そして、羽子板と聞いて誰もが先ず頭に浮かぶのは「羽根つき」ですね。

室町時代、この羽根つきを「胡鬼(こき)の子勝負」といい、お正月の年占いとして末広がりの形をした胡鬼板(羽子板)で、胡鬼子(羽根)をつきその年の平安を祈願したといわれています。

ここで胡鬼子(羽根)ですが、羽根突きに用いられる羽根で植物の「衝羽根(つくばね)」の異名で、羽根は黒い錘(おもり)に色のついた羽が付いていますね。

この黒い部分は現在ではプラスチック製のものが多いですが、本来は無患子(ムクロジ)と言われる木の種子が使われています。

無患子(ムクロジ)の漢字は、「子」 が「患わ無い(わずらわない)」と書いて「無患子(ムクロジ)」と読み、魔や厄を「跳ね返す、跳ね除ける」との意味から羽根つきの「羽根」にすることで、厄除けや無病息災など、子供の健康を願ったものです。

羽根以外に「数珠」にも使われたり、実にはサポニンという成分が含まれており、昔は天然の洗剤として利用されていたり、黒い実を豆にみたてて、魔滅(まめ)で魔除け、マメに暮らすといった縁起担ぎもあるようです。

こうして、お正月に子供が羽根つきをするのには意味があったんですね。

無患子の実は、とても堅くて種子の中でも特に優れていて、少しぐらいの衝撃ではビクともせず、硬い場所に落とすと良く跳ねることから羽根つきの羽根に使われたようです。

ちなみに、この羽根ですが総称では衝羽根(つくばね)とも言い、ビャクダン科の落葉低木で、その実が羽根つきの羽根に似ていることから、お正月の縁起物としておせち料理の飾りとして人気があり、また、茶花としても新年の茶会で椿と共に飾られるのが一般的です。

こうして羽子板と衝羽根(つくばね)は、どちらも日本の伝統的な遊びや飾り物に関連する言葉なんですね。

江戸時代には、胡鬼板(羽子板)に金箔を施した上に宮中の左義長の儀式の風景を描い、「左義長羽子板」というものが厄除けとして貴族への贈り物に用いられました。

「左義長」とは、正月の15日に宮中で行われた魔除けに儀式で、今日民間では「どんど焼き」などといわれ注連縄(しめなわ)や門松などをお焚き上げし、その火で焼いた餅を食べて邪気を払う行事として各地で行われています。

やがてその羽子板に美人画などが描かれるようになり、江戸後期からは押絵の技法を取り入れて現代の形になりました。

この押絵というのは、羽子板などに使用する伝統的な手工芸の名称で、厚紙に描いた図案を切り抜いて中に綿を含ませた羽二重その他の裂(きれ)でくるみ、面相や彩色をほどこして組み合わせたものです。

当店にてご案内させていただいている押絵羽子板ですが、一般的な押絵羽子板とは異なり特許製法を用いて押絵を立体的にし、独自の配色で仕上げた秀月オリジナルの羽子板となっております。

そして、肝心の羽子板をお飾りする時期ですが・・・

『新暦の現代では、12月中旬から1月15日くらいまでお飾りするのが一般的となっております』

是非とも昔ながらの美しい伝統的な手工芸で制作された押絵羽子板で、可愛いお子様の初正月をお迎えください。

弊社では黒い無患子(ムクロジ)は魔除け厄除けになると言われている事から、羽子板をお選びいただいたお客様には本物の無患子(ムクロジ)を使用した衝羽根(つくばね)をお子様にひとつプレセントさせていただいておりますので、一緒にお飾りしていただければと思います。

十七代目 人形の秀月は、大切なお子様のご成長を願って流行に左右されない厳選された羽子板飾りを取り揃え、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。

伝えたい日本の心 美しい伝統
人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月

目次