こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
磐田市のM様より、母が制作する市松人形をお選びいただきました。
M様は古くからの上得意様で、現在でも何かとお世話になっております。
お客様を紹介して下さったり、宣伝して下さったりと、とても頼もしい存在ですね。
なので、何かあるとつい頼ってしまいますが、その勢いも頼もしく昔で言う「肝っ玉母ちゃん」の様な存在です。
そんなM様にお選びいただいた市松人形ですが、工房にて母が一から制作している秀月オリジナルの市松人形。
反物の選びから仕入れ、採寸、裁断、裁縫、着せ付けまで全てをこなしていきます。
この子の赤いお着物は、京友禅。
京都西陣の反物屋さんまで出向き、母自身が厳選し目を光らせ選び抜く訳ですが、時折私が選ぼうとすると「あんた、相変わらずセンス無いね」と一撃です。
この時、京都西陣でも何処の反物屋さんと取り引きがあるかというのも大きなポイントになります。
なぜなら、その反物屋さん自身も織る訳ですが、どれだけ腕の良い織元さんを抱えているかにも差が出ますので、ここで信頼・信用という言葉が出てくる訳です。
もちろん、京都には素晴らしい反物屋さんが多いのですが、お店の色や好みがある事と、一番は担当の営業の方がどれだけ信頼を置けるかですね。
現在は退職してしまいましたが、それまでの営業の方は昔の磐田店のあった頃からですので、私が小学生の頃からの方で私もよく叱られ、何でも飾ることなく白黒ハッキリと言う方で口も堅く、十五代目の祖父や十六代目の父も喧嘩もしましたが信頼していました。
それだけ反物として自分のところの商品に自信がある証ですから。
それ以来続いている訳ですが、その中でも秀月の市松人形に似合う反物、作風に合う反物、柄の出方が合う反物を厳選していきます。
帯は帯で別の反物を使用する訳ですが、帯作りをする時は昔ながらの糊仕事が重要で、単に反物を折り曲げているだけではなく、帯として仕上がるまでには幾重もの下仕事があり、それらが出来て初めて帯が完成する訳ですので。
そして、市松人形は大人の女性ではなく、女の子なのでお顔はもちろんの事、お顔と胴体のバランス等、細部に至るまで寸法や作りも秀月オリジナルとなっております。
「市松人形なんてどれも同じ」とおっしゃられる方は、市松人形や違いを説明してくれる人が居ないのでご存知ないだけですので。
最も重要な事は、「市松人形は、その子の身代わりのお人形」という事です。
お雛様はお守りで市松人形は身代わりとして、昔から一緒にお飾りされていて、市松人形はしまわず年中お飾りされている訳で、それぞれにきちんと役目と意味がある訳です。
今回お選びいただいたこちらの市松人形は、私もお世話になっている袋井市のzinzai.coffeeのオーナー様の元へと嫁いで行きました。
こちらのHANDELS VAGENのアイスクリームのピスタチオの虜になっておりまして、夏場はちょくちょく伺っております。
そのオーナー様の元へM様から「○○ちゃんのとこへ届けてちょうだい」と、三人とも知り合い同士の中でやり取りをさせていただきました。
M様この度も、秀月の市松人形をお選びいただき誠にありがとうございました。
オーナー様の可愛いお孫さんの身代わりとして、可愛らしくもきっちり役割を果たしてまいりますので。
秀月の作札が誇らしく光ります。
五月人形のお問い合わせやご来店もありますが、五月人形は例年通り2月中旬頃からの展示となります。
十七代目 人形の秀月は皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。
伝えたい日本の心 美しい伝統
人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月