男雛(おびな)の美しさ

こんにちは、人形の秀月 十七代目です。

お雛様というと女雛に目が行ってしまいますが、実は男雛も美しいものです。

ただ、どこでその美しさを引き出すかがポイントですが、お顔やお化粧、お顔の表情、お顔とお着物とのバランス、冠の被せ方等細部に至るまで気を付けていかなければ良さを引き出すことはできません。

不思議とキチッと綺麗に決まると、表情も一気に華やかになってきます。

こうした事は、人形の目線にならないと分からないので、人形の目線に合わせていくと人間の世界と人形の世界が全く違う事に気づき、人形の世界観で見る様にしていきます。

そうすると、どういう風に見られたいかとか、このお着物である事でどう見えるかとか、この屏風や雪洞や燭台等で自分がどう映えるかなど・・・

ちょっとマニアックかもしれませんが、自分の顔の両側に桜橘や雪洞や燭台、お道具を置いて、自分がお雛様になった時にお雛様から私たちはどう見えているのかなと試しています。

これは、ムッと真面目な顔をしたおじさんが自分お顔の周りに桜橘や雪洞などを置いて遠くを見ている訳ですから、知らない人が見たら変〇にしか見えないかもしれませんね。。。

一歩間違えれば・・・ですが、かのストラディバリウスも完成したばかりのヴァイオリンを抱いて寝たと言われるほどですので、それと同じような感じと思っていただければ。

すると、いつも私たちが見ているものとは全く違う世界で、「お雛様は私たちをこう見ているんだな・・・」と、お雛様側からの景色と気持ちがよく分かります。

そうするとお人形と一体化するような気になり、「自分たちはどう見られたい」というのが感じる様になるんですね。

それに何よりも生みの親ですので、自ずとお飾りの仕方も分かってきますし、何がどう最適であるかというのも分かる様になります。

こうした事を楽しみながら180度の方向からやっていく訳ですが、その中でお雛様の光る部分が出てくるんです。

それは、それぞれのお雛様によって異なるのですが、お道具類も全く同じです。

「ここ!」という所をカメラで押さえて、ご案内させていただいている次第ですが、写真の撮り方も非常にマニアックですので、とてもここではお伝え出来ませんが、言える事は『写真の真は、真実の真』です。

もちろん色補正や背景云々の加工は全くしませんし、トリミングも殆どしません。

それでこれだけ美しい男雛の表情が出せるのですから。

もちろんそれには、それまでの下づくり(準備)に膨大な手間を掛けている事は大前提で、その結果としてお顔も着物も全てに美しい表情が生れますので。

それだけでは無いのですが、8割が下づくり(準備)だとしたら2割で結果ですね。

これは職人が携わるどの業界も同じで、職人の仕事とはそういうもので、単に仕入れて右から左へと移動させ、いかに人形そのものの価値を下げ小細工し値引きや安売りを売りとするのとは根本的に訳が違います。

ちなみに、量販店は量販店用に作られた物が多いので、根本的に異なりますので。

これが、代々続く製造元として人形師として甲冑師として、大切なお子様の為にと親御様や御祖父様、御祖母様のお気持を形にするという仕事を生業としている老舗専門店の仕事です。

これは全国に点在する、製造もしている老舗人形専門店は皆同じですね。

ただ広くて数がある・・・それを専門店というのであれば、私たちの様な実際に作る職人が居て、製造販売しているお店はなんと呼ぶのかなと思う訳です。

ショールームでは、何点か未だ屏風等が揃わないお飾りがありますが、お人形達は最高の美しさを披露し、皆様のお宅へ嫁ぐ日を今か今かと待ちわびておりますので。

厳しく難しい世界ですが・・・好きで楽しんでいます。

十七代目 人形の秀月は、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。

伝えたい日本の心 美しい伝統
人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月

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