浜松市中央区のH様はシックな黒い衣裳のお雛様

こんにちは、人形の秀月 十七代目です。

浜松市中央区のH様より黒い衣裳が特徴的なシックなお雛様をお選びいただきました。

若夫婦でご来店され、しばらくご覧いただいていると、何やらご主人が悩んでおられる様でした。

こちらのお雛様の前で立ち止まられ、何か考え込んでおられる様でしたのでお声掛けさせていただくと、お家でのお飾りされる場所とこちらのお雛様の飾り台の大きさを比べられて悩んでおられました。

さらにお聞きすると、少し小さめの床の間がありそちらにお飾りされたい様ですが、その木の床の色を生かされたい様で、仮に飾り台まで置くとその床が見えなくなってしまうそうで。

その横にはお仏壇を置く場所があるそうですが、そこなら飾り台も一緒にフルセットでお飾りする事が可能という事で。

悩ましいところです。

ちなみにこちらのお雛様、真っ黒という訳ではなくポイント的に光沢を持たせ、しっかりと下地にも柄を織り込んでありますので、黒というよりもブラックという表現が良い様にも思えるお衣裳ですね。

これが、ただの無地の黒になってしまうと、暗い雰囲気にもなってしまいますので、決してその様にはならない様にし、伝統的なお着物の中に洋装的な雰囲気を持たせ、シックなお雛様に。

姫も落ち着いた雰囲気で、手には銀箔の扇を持ちます。

ちなみに、後ろの衝立は大変珍しい錫箔(すずはく)です。

そして殿のお袖には・・・

どこか可愛らしさも感じる手描きの桜。

姫のお袖にも同じように手描きの桜が描かれ、二人がお揃いになる様にと。

そして、二人の引き立て役となる衝立は錫箔(すずはく)に、同じ様に手描きの桜が描かれております。

こうして、お飾りのバランスを取ってあるのですが、H様は床の間を生かしたいご様子で。

床は木という事で、エンジにも近い様な飴色にも近い様な色で、お話しを伺っただけでも個人的に好きな雰囲気です。

ただ、床の間といいますと天井が高いので背面上部の空間が空き過ぎてしまうんですね。

現在は軸か何かを飾られている様ですが、ここでひとつご提案で、雛祭りの時期には何か雛祭りにちなんだお雛様以外の軸を飾られてはどうでしょうという事で。

さらにもう一歩踏み込んで、少し大きめの花器で生花の桜や梅を枝ごと大胆に大きくお飾りしてみては。(自然の桜や梅の木を勝手に切ったり折ったりして持ち帰る事は禁止です)。

これは他のお客様にもご提案させていただく事があるのですが、お雛様のお飾りとして生花を生けられるとお飾りの上品度は格段に上がります。

その時にもポイントがあるのですが、それは秀月でお選びいただいたお客様のみに必要に応じて、ご提案させていただいておりますので。

そうしてお話ししていくと、ご主人のお顔の表情も少しずつ明るくなり嬉しそうに。

こだわりがあるのだけれど、それを上手く言葉で表現できないという事は私も同じですので、その心中を察してお話しさせていただいた次第です。

ですので私の場合、調子のいいセールストークという事自体が好きではありませんので、本音でお客様と一緒に悩み考えるという事が多いですね。

そしてH様が床の間にお飾りされるという事になり、「お飾り台等が置けないけどどうしよう・・・」となる訳ですが、こちらのお人形はとてもお気に召されている訳ですので、「お人形だけで大丈夫ですよ。ただ、殿と姫という身分の高い方を床に直接座らせてしまうのは礼儀として失礼にもあたりますので、せめて座布団か何か少し高めの物の上に座らせてあげてくださういね」と、お人形のみでご案内させていただきました。

「いいんですか!?」と驚かれていましたが、仮にその床の間に入る大きさのフルセットで結果的にお人形も含めコンパクトなお飾りになってしまうよりも、可愛いお子様の為にもお気に召されたお人形で大きく見栄え良くお飾りしていただきたいので。

そうしてせっかくならと、こちらの殿と姫が座っている親王台(しんのうだい)を一緒にという事で、こちらは黒塗りで駿河の伝統工芸でもある竹千筋細工ですので、通常の親王台とは異なる趣のある表情があり、こちらの殿と姫にも合うんですね。

「これで一旦お飾りしてみましょう」ということで、喜んでお帰りになられました。

そして、秀月オリジナル お名前立札(木札) オルゴール付も。

既存のお飾りもバランスが取られておりますので十分に綺麗ですが、全てではありませんが時にはこうした変化にも対応させていただいております。

お客様と、「ああして、こうして」とお話ししていくだけでも夢が膨らんでいき楽しくなり、お客様の目も輝いてくるんですね。

これが大切だと思います。

ただ売るだけでしたら誰でもできますし、現在ではインターネットで様々なお人形が簡単に手に入る時代ですし、好きな言葉では無い「売る」という事よりも、お飾りしていただきお子様に伝え行く事が大事です。

「便利な事ってそんなに良い事なのかなぁ・・・」と疑問に思いながら、ご来店お選びいただくお客様には、時と場合によって、より綺麗に映えてお飾りが格段に良くなるお飾りの仕方なども会話の中でご提案させていただいたりもしております。

それは、和風・和室・洋風・洋間・北欧調云々・・・ではなく、それ以前の本質の問題ですので。

きっとお飾りが楽しくなりますよ。

H様この度は、秀月のお雛様をお選びいただき誠にありがとうございました。

きっと素敵なお飾りになりますから、何かあればいつでも気軽にご相談くださいね。

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十七代目 人形の秀月は皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。

伝えたい日本の心 美しい伝統
人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月

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