こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
東京都練馬区のK様より、秀月オリジナルの可愛らしいお雛様をお選びいただきました。
大きさは間口が約55cmとコンパクトでも小さ過ぎず、程よい大きさでお人形も可愛らしくも品良く豪華に映えます。
よく「小さいの」とおっしゃられ探してる方がいらっしゃいますが、大事な事はお飾り台の上にどれ位のお人形が乗り綺麗に映えるかで、要はバランスです。
お人形というのは、衣装着の場合は小さくても作る手間は変わらないどころか、逆に難しく手間が掛かる場合が多いので、単純に小さいから安価かというとそうではなく、単に小さいから安価というのであればそれは疑ってみる事が必要でしょう。
こちらのお雛様は有職のお雛様で、女雛は昔ながらの赤いお着物で、流行に左右されることはありません。
こうしてご覧いただくと、小さくとも襟の重ねやお袖の重ねや仕上げといい、丁寧に着せ付けられている事がお分かりいただけると思います。
同じ赤でも、京都西陣の中でも選ばれた赤は発色も良く深みがあり、可愛らしく上品に映えますね。
そして、着せ付けも若干丸みを持たせてありますので、可愛らしさもあるんです。
大きければ豪華に、小さければ可愛らしく、両方に共通する事は品を欠かさない様にし、それぞれの良さを持たせて仕上げていきますので。
お顔も流行に左右される事無く、お人形の胴柄のシルエットに輪郭も合わせ、少しふっくらとさせ幸多きお顔にと仕上げられております。
こうした事もバランスで、お化粧もその子用にと仕上げられている昔から変わらぬお顔ですね。
もちろん男雛も同じで、優しくも美しいお顔でお着物は少し明るめにし、一対で落ち着いた華やかさを持たせてあります。
これは基本ですが、良い物になればなるほど派手さは無く、落ち着いた上品な美しさが出てきますので。
これはお雛様も五月人形も同じですね。
屏風は二曲で金箔とし、和紙を入れる事で表情を持たせ、枝桜と舞う花びらが優しい春を思わせます。
灯りには燭台を用いて、灯りを灯すと山桜が出てくるという。
そしてお花は伝統の桜橘ですが・・・
可愛らしい花車で雅やかな世界へと誘(いざな)います。
この花車も昔からのお飾りで、昔と比べると幾分にも小さくはなりましたが、きちんと丁寧に作り込まれ輪には飾り金具や蒔絵まで施され、「どれほど手が込んでるのだろう・・・」と思ってしまうほどです。
好きなんです、こういうお道具。
これは、近頃ではお雛様も様々な形態となっており、時代の流れもあってお花も洋花の造花だったりすることも多くなりました。
これも時代の流れなので仕方のない事かもしれませんが・・・
お雛様の桜橘は、京都御所にある左近の桜 右近の橘がその元となっております。
お雛様のお飾りとは、この京都御所の内裏にある紫宸殿を模したものですので、本来のお飾りの輪郭というのがお分かりいただけるかと思います。
そして桜は、清らかさを大事にする日本人の心を表すものとして「日本の国花」にもなっており、橘は蜜柑の仲間で唯一の野生種でありその実は、古くから「常世国」の不老長寿の妙薬として珍重されました。
簡単に書きましたが、こうした事を知っている上でお飾りをアレンジすると、しないとでは大きな違いが生まれ、また国際化社会となっている現代においては、日本人としても是非お見知りおきください。
きちんとそれぞれに意味があるんですね。
こうしてそれらの意味いわれを知ると、昔ながらの古式ゆかしいお雛様が素敵に思えてきます。
そうすると、お雛様選びにもブレる事無く、「お雛様は本来こうで、私はこうだからこういうお雛様をお飾りしてあげたいの」とハッキリとご自分の形が見えて来るかもしれませんね。
日本の伝統美とは奥が深く、和室・洋間はまず関係ありません。
よく日本の一流ホテル等でも洋風なお洒落な館内であっても、やはり昔ながらの赤い毛氈の七段飾りのディスプレイをこぞってご希望されるのもそのひとつですから。
流行に左右される事のない、古式ゆかしい秀月のお雛様。
K様この度は誠にありがとうございました。
さすがお目が高く、きっと笑顔の多いお家となる事間違いありません。
十七代目 人形の秀月は皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。
お雛様の飾り方 左近の桜 右近の橘の由来 京都御所も合わせてご覧ください。
伝えたい日本の心 美しい伝統
人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月