東京都江戸川区のS様は50年前の木目込み人形のお顔の修理

こんにちは、人形の秀月 十七代目です。

東京都江戸川区のS様より、50年前の木目込み人形のお顔の修理を承りました。

S様は、ホームページをご覧いただきご相談いただいたのですが、50年前の物でお母様から購入したと思う店舗を確認し電話をしたところ、そちらのお店では「対応できる人がいないと断られてしまって・・・」との事で。

今後もずっとお飾りしていきたいので。ただ、この状態ですと飾る事が難しいですし、何より、人形が可哀想で・・・」と。

50年前というと、とても貴重なお人形ですが、確かにこの状態ではお飾りも出来ませんし、確かにお人形が可哀想です。

それを修復され、今後も大切にお飾りされたいとの熱意に感銘を受けお引き受けいたしました。

とはいうものの、石膏のお顔が完全に割れてしまっていますし、50年という年月が経っていると下手に触ると他の部分も崩れてしまう可能性があり、とてもリスクが高くなります。

写真の様に、胴体と首は完全に固定されており外す事はできませんので、更に難しくなります。

先日、とあるお客様で現在は無き量販店で購入された木目込み人形のお写真を見せていただきましたが、「お店の人が胴体に別のお顔を付け替えたオリジナルの木目込み人形と言われて、○○円だったんです」とおっしゃられていました。

量販店?お顔を付け替え?とその時点で変だと思ったのですが、お写真を拝見すると付け替えどころか何もしておらず、単に立札を全く別の名前に変えて販売しているだけした。

お客様には分からないからと平気で噓を言って高値を付け、さらに大幅な値引きで売るという・・・その店のやり方かもしれませんが、私にはそんな姑息なやり方はとてもできません。

その後、そのお店はどうなったかというと、ご想像の通りです。

話しは反れてしまいましたが、これだけお顔が割れてしまっていると割れた部品を使用しながら、足りないところは石膏を盛ってとなり、髪の毛は外せませんので困難を極めます。

不幸中の幸いは、お顔の正面は何ともなかった事です。

お顔の正面になってしまうと、場合によっては面相の描き直しにもなってしまいますので、そうすると本来の表情とは若干変わってしまう恐れもありますのでオススメは出来ませんので。

石膏はご存知の方も多いかと思いますが、欠けた角等はボロボロと崩れてしまいますので細心の注意が必要です。

これこそ、ベテラン職人の腕の見せ所でもあり、経験がモノをいう仕事ですね。

そうして、無事に修復が完了したお顔がこちら。

とても50年前とは思えない、いい表情のお顔です。

よほど腕の良い職人さんが制作されたお顔でしょう。

横からご覧いただいても、割れていたとは思えないほど綺麗に修復できております。

こちらからご覧いただいても分かりません。

割れた部分を丁寧に修復し、50年経った周りの色と変わらない様に色を調合しお化粧を施す訳ですが、髪の毛等の古い部分は古いままとして残しておくことも重要で、なんでもかんでも新品の様に新しくしてしまう事ばかりが良いのではありませんので。

そのバランスを見ていくのも職人の腕であり、その職人の人間性が表れるところですね。

「作品に人柄が表れる」と言いますが、その通りで仕事にも表れますので。

そしてこの子も悲しそうなお顔から、凛とした清々しいお顔に戻りました。

見方によっては、厳しい表情の一面も見えてくるのはお母様の面影でしょうか・・・美しいお顔です。

ふっくらとした幸多きお顔で、これからもS様のお守りとして見舞っていただきたいと思います。

S様この度は、誠にありがとうございました。

これからも大切に末長くお飾りくださいね。

雛人形・五月人形の修理・リメイクのご相談は、まずはこちらよりご覧ください。

本日も多くのご来店ご成約、誠にありがとうございました。

十七代目 人形の秀月は皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。

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人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月

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