こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
東京都小金井市のT様より、お雛様のお顔の修理を承りました。
T様は、最初にホームページよりお問い合わせいただきました。
28年程前のお雛様で、三段飾りですが当時としてもとても高価なお雛様で、お写真をパッと拝見させていただくだけで、「あ、これは高価なお雛様だ」というのが分かります。
「鼻が折れてしまって復元できないでしょうか」というご相談でしたので、お直しは出来ると思うのですが、実物を拝見してみなければ大きさや状態が分かりませんのでお送りいただきました。
ホームページの修理ご相談のページにも記載されておりますが、「お幾らくらいかかりますでしょうか」「概算でいいので教えてください」「だいたいでいいので・・・」といったご質問には事にはお答えできかねます。
必ず修理可能と判断させていただいた上で、実物を拝見させていただき必ずお見積りを出させていただきいておりますので。
さてT様のお雛様のお顔ですが、石膏のお顔で欠けてしまっているのですが、他には傷は無い様ですし石膏も崩れてくる事も無い様でした。
それしにても良い衣裳で、お鼻が欠けてしまっているとはいえ、綺麗なお顔ですね。
こうした場合、お鼻がある状態のお顔は分かりませんので、長年の経験で鼻の形を形成し修復していきます。
これは、長年の経験を積んだベテランの職人さんでなければ出来ない仕事ですね。
先ずは、欠けた部分を整え同じ石膏で盛っていきます。
この子のお顔であれば、こういう鼻の形であろうという形に成形していき、さらにバランスを見ながら整えていくのですが、もちろん型というものはありませんので全てが細かい手作業です。
乾いたところで、お鼻の周りは28年の年月が経ったお顔の色ですので、それに合わせて色を調合していくのですが、これは塗った時と乾いた時の色は若干異なってきますので、それを計算に入れた上での調合となりますので、これこそ経験が物を言う訳ですね。
そして完成したお顔がこちら。
分かりやすい様に、あえて露出を調整し明るめに撮影いたしました。
言われても、修復されているのが分からないかと思います。
反対側からご覧いただいても、全く分からないと思います。
それにしても優しい良いお顔ですね。
最初のお写真では少し悲しそうな表情でしたが、パッと明るくなって綺麗な表情が出てきました。
この瞬間は、私もとても嬉しい瞬間ですね。
こうした修理にしても、昔の良いお人形となるとお道具類も含め素材も良ければ創りも良くなりますので、修理にもそれなりの金額が掛かってしまう場合があります。
それをどうお考えになるかはお客様次第ですが、お任せいただいた以上はきっちりと仕事をさせていただきますので。
簡単なお顔の取り換え(新調)であれば右から左へで簡単かもしれませんが、秀月へご依頼されるお客様は新品への交換ではなく、想い出のお品の修復をご希望ですので、熟練の職人が昔と変わらぬ全て手作業で責任をもってお直しさせていただいており、さらに全国よりご依頼が来ておりますのでお時間も有する事となります。
ただ、全てが修復・修理可能かというとそうではなく、場合によっては残念ながらお断りしなくてはならない場合もございます。
修理・修復箇所が多くなり、状態が悪くなればなるほど修理・修復に掛かる金額も高くなってしまいますので、できるだけ大切に扱っていただき、保管する時は埃をはらって陰干ししていただき、安全な防虫・防湿剤を用法を守って入れていただき、湿気の少ないできるだけ高い位置に保管し、年に一度は風に当ててあげてください。
大事にしてあげれば、お人形もその気持ちに応えてくれますので。
T様この度は、誠にありがとうございました。
綺麗なお顔に戻りましたので、これからも末永くお飾りくださいね。
修理・修復にはお時間が掛かる上に、職人は「やっつけ仕事」的な粗い仕事はいたしませんので、間際になっての急ぎの修理・修復はお節句までに間に合わない場合もあり、今季はお断りさせていただく場合がございますのでご了承下さい。
お雛様・五月人形の修理・リメイクにつきましては、こちらよりご覧ください。
十七代目 人形の秀月は皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。
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人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月