こんにちは、人形の秀月 十七代目です。
大晦日の工房で、一人黙々と遊んで(兜制作)おります。
新作の兜を制作している訳ですが、予定には無い兜でちょっとピンときたりすると、ゴソゴソと部品を出しては試作をしたりして失敗しながらも制作する訳です。
写真の鍬形は、長鍬形に近い鍬形ですが、個人的には好きな鍬形ですので、どういう兜に取り付けようかと考えイメージは出来ていたので、それを形にしようと試行錯誤しておりまして。
手持ちの兜鉢や小札、威糸、金具、ネジ等の部品は全て頭に入っているので、先ずはイメージしながら頭の中で組み立てるのですが・・・なかなか一度では上手くいく事は少ないので、トライ&エラーの繰り返しですね。
そうやってしていると・・・
「ん?」と写真の徳川家康公の前立てが目に入り、家康公の兜を制作しているという脱線はしょっちゅうです。
こうして一点ものの兜等が生まれる訳ですが、最初から狙って「一点もの!」とやると、大概、大したものは出来ませんね。
制作していくうちに、偶然バランスよく整い「お!」という物が出来上がるのですが、その偶然の確立を多くしていく訳ですが、それには数をこなす必要があります。
そうして数をやっていくうちに、手が大きさや鉄板の厚さや固さ、素材・重さ・ネジの種類・釘の種類等といった事を覚える訳です。
要は、頭ではなく身体が覚えてくるんですね。
それが何百種類とあっても、触った瞬間に「あ、これ違う」といった様に、目で見るよりも早く判断出来る様にもなり、部品と部品の相性等も分かる様になります。
そして利き手がどっちで、何処に何をどう置けばとなって、結果的に仕事は機械よりも早く正確に綺麗に仕上がり、温もりが生まれます。
量産品の物は、無機質で見た目だけで伝わってくる物が無いと思うんですね。
なかなか難しい事かもしれませんが、私を含め全国の数少ない人形師や甲冑師・頭師・・・等といった日本の職人さんは、こうした仕事が日常茶飯事で日々腕を磨きながら試行錯誤し、一生懸命制作しております。
お雛様も含め、そうした作品は極端な値引きをしたり安価に販売される事はまずありませんので、そうやって販売しており更に「今お買い上げいただいたら、何割引きでこれもサービスします」という販売の仕方をしている販売店を見かけたら、それはお雛様や鎧・兜単体の値段を分かりにくくする戦略ですので、見るだけでスルーされるのが賢明です。
そうした事から、お雛様も鎧・兜・甲冑・子供大将も高価なお品ですので、ご購入にあたっては信頼のできる店がお勧めです。
さて、そんな事をお客様に伝えしたいと考えながらも手は勝手に動き、ここに一点ものの兜が完成していきます。
新作五月人形の展示販売は、例年通り2月中旬以降からとなりますので、五月人形をお考えのお客様は他所もご覧いただきながら、今しばらくお待ちくださいませ。
こうして創作している時って、失敗ばかりで難しいですが楽しくてたまりません。
十七代目 人形の秀月は皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。
伝えたい日本の心 美しい伝統
人形師 甲冑師 十七代目 人形の秀月